古い貸家の解体されている様子に、しばし見入りました。その理由は、かつての一時期、この建物の右半分側にアンティーク物のミッドセンチュリー家具を扱っていたショップ「plein de」が入っていたからです。店のオーナー安達さんは、自分で2階の床を部分的に撤去して吹き抜けに改造していました。その様子が1950年代のモダン住宅のように美しく、私はその巧みさに心奪われていました。
しばらくして安達さんはお店を手放して自宅のアトリエで静かにされていたのですが、私は引き続きそちらへもお邪魔しました。ある日のこと、昭和初期の腕利きの大工棟梁である小島与一さんの話になり、
富樫邸や
大原邸、斉藤邸のことを懐かしんでいたところ、安達さんは驚くべきことを告白されました。
「ウチの店についていた玄関ドアは、元々は斉藤邸についていたものだったんだよ」
驚きのあまり言葉を無くした私に、安達さんはお話を続けてくれました。
「斉藤邸を解体するときに、いろいろと譲り受けたのさ。ステインドグラスや扉のほかに玄関ドアは自分の店に使えそうだなってね。今は美容室になっていると思うけど、まだついているはずだよ」
私はその足で、すぐに確認しに行きました。