田上 義也 作品アーカイブス

1956

更科 源蔵邸

1956年

札幌市中央区双子山

現存(茶色部分を増築)

東条正男

MODERN LIVING vol.35 昭和36年より

 詩人・郷土史家・アイヌ研究家という肩書きを持つ更科源蔵さんの自邸。戦前・戦後、貧乏で苦労したという自叙伝の中にこの家のエピソードが登場します。友人だった金田一昌三さんが館長をしていた北海道立図書館(現 北菓楼札幌本店)に出入りしているうちに同様に通っていた田上先生と出会って意気投合し、また高倉新一郎さんからは、双子山に所有する土地を貸すから家を建てれば良いじゃないかと勧められたといういきさつが述べられています。何とか着工したものの、お金が足りなくて引っ越した時にはまだ窓ガラスが入ってなかったという告白までされています。

 この貧乏話は、謙遜だったのか、はたまた誇張だったのか?立派な体裁の外観を見るに、どうしても貧乏話と結び付けられないのです。

2006年

 茶色の2階部分は増築部分です。なぜ既存部と増築部の色を変え、あえて区別したのでしょうか?また、この増築部分は田上先生の仕事なのでしょうか?謎は私を捉えて離してくれません。

MODERN LIVING vol.35 昭和36年より

 正面中央には、吹抜けのリビングがあります。上下の窓から明るい光が大量に差し込んだでしょう。板張りの床に大きなペチカが置かれ、その上に子供部屋が2室、梁で空中にかけられました。暖気は吹抜け空間全体に行きわたり、快適な暮らしを満喫できたにちがいありません。

 立体的な開放感のあるモダンな内部空間です。当時は安価な材料とされたブロック造とは思わせないリッチなデザインです。
 
 更科さんの貧乏話がこの家の書斎で書かれたかと思うと、照れの裏返しと思われるのです。
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