18禁建築

18kin/2020

架空の会社

2020.10.13

札幌市
 私も年をとったということなのでしょう。最近はある建物を見て、蓋をしていた記憶を開けてみることが増えてきました。

 バブル崩壊や拓銀破綻に翻弄されながらサラリーマンをしていた私は、バタバタと倒産する得意先や支払いに窮する得意先をいくつも抱えながら会社からは売上目標必達を命じられ、新規得意先の開拓で売上減少を埋合せ続けていました。そんなある日、取引を始めたばかりの会社の社長から廻し手形を受け取りました。

 支払期日が到来したものの現金化できないと判明した手形を持って、償還をしてもらいにその会社を訪れました。しかし、というかやはり、会社は空になっていました。ダメ元で手形振出人の住所に行ってみると、画像のビルがたっていたのです。

 〇〇建設と間に合わせな看板の付いたドアには鍵がかかっていませんでした。ドアを開けるとフカフカのカーペット敷きの床に事務机やイスは無く、その代わり大きなベッドがありました。乱れた布団と2つの枕の上に、カーテンの隙間にあるステインドグラス風の窓を通して気持ちの悪い色が降り注いでいました。
 「やられた。」と思いました。
 その時やっと、最初から全て仕組まれていたことに気がついたのです。


 20数年振りに思い出のビルの前に立ちます。
 〇〇建設のあった部屋には、今度は投資コンサル会社の看板がついていました。

 (画像のビルと〇〇建設は関係ありません。)
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