Blog

blog/2011

開くか閉じるか

2011.03.06

アトリエブンク T邸 1974年

 住宅設計の際、外部に対して開くか、もしくは閉じるかという問題があります。この10年、特に強く意識されたような気がします。

 藤森照信さんによると、この問題、前回は1970年代前半に盛んだったようです。それまでは、戦後モダニズムの明るい開放的平面が住宅設計の主流でした。しかし、これに反旗を翻した輩達が現れて、内向する自閉的平面を設計しだしたというのです。よく知られるものとして、伊東豊雄、安藤忠雄がその代表ということです。歴史を振り返るに、閉じた者達だけが次の新しい時代を切り開いてきたのだそうです。

 では、当時の札幌で閉じた人はいるのでしょうか。

 それ以前の札幌の住宅は、寒く長い冬に耐え忍ぶ必要がありました。必然的に窓の小さな暗い家にならざるを得なかったと思います。つまり、息の詰まる冬の生活からの解放が市民の願いだったのです。その頃になってやっと住宅の断熱性能が上がり、それまでは不可能だった開放的な冬を楽しむ事が出来るようになりました。当時の札幌の一般的な住宅デザインは、中央の先端モードとは逆に大きなベランダ窓を設えてますます開き始めた時代だったのです。

 しかし、やはりそんな中、札幌にも閉じた住宅が誕生したとわかりました。

 この住宅は1974年の完成だそうですので、中野本町の家や住吉の長屋よりも早いです。来訪者を拒絶するようなファサードが独特な印象です。じっくり眺めていますと60代と思しき短髪の女性が、モノトーンの装いで出掛けて行かれました。とても素敵な光景でした。
Top