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1969年の冒険?

2015.03.05

 段状に屋根面が重なっている北海学園大学の体育館。段差部分には窓ガラスがはめ込まれ、内部が自然光で明るいのが特徴です。しかし下部の窓ガラスは、冬期間、雪に埋まってしまいます。この体育館の設計をされた太田実先生、落雪でこうなることくらい、最初から織込み済みだったでしょう。1969年の竣工当時、これは失敗ではなく、型破りの作品として喝采を浴びたに違いありません。

 「最近の若い建築家は、変にうまくなって全然面白くないね。」とは、大御所の先生方からよく発せられるお言葉です。当時は、設計目標の為なら多少の快適さを犠牲にしても許されました。しかし現在は、クレームがつかないように、問題が生じないようにと心がけ、設計の冒険心を犠牲にしなければならなくなりました。恐らく、そんな現状に対してのコメントなのでしょう。

 あの頃の建築を見ますと、建築家も施主も、寒けりゃ厚着しよう、雪の害にはベニヤ板で対抗しようと、建築デザインを人間力で補完せんとする意志と大らかな空気を感じることができます。
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