真夏には怖い話が定番です。
怖い話にはボットン便所が登場します。
しかし私は、ボットン便所より地下鉄東西線にあった便所が怖かったのです。
黒いFRP製の大便器は、かっこいいデザインのはずでした。しかし、限定された足の置き場が、そこから踏み外すことを許してくれません。用を足し終われば、激しい流水が円形の便器全体に渦を巻きました。流れ終わるまで足を開いて爪先立ちで待たなければならないのでした。
公共トイレをまだきれいに使うことのできなかった時代。便器のデザインは、使う人よりも清掃する人の為に知恵を絞られていたらしいのです。
現代の美しい公共トイレは、このような過去を通して獲得されたのです。
遠い昔の記憶のトイレと思っていましたら、東西線ひばりヶ丘駅に現存していました。