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乳牛の柄

2020.11.03

 今年の春に完成した北海道ホルスタイン農業協同組合の新事務所ビル。

 白と黒に貼り分けられた外壁や小さな前脚のような柱を見て、「乳牛か!」とツッコミをしなければならない哀しさを考えてみると、建築の表皮だけをいじる行為も、私のように街歩きで建築の外観だけを見て歩く行為も似たようなものであると思われてきます。しょせん私は、ほとんどの建築を外観だけでしか見ることができません。建築にファッションを纏わせると消費されてしまうと注意しながらも、建築に短髪のモガや長髪のベルボトムジーンズ男を連想してしまいます。都心のビルは、いろんなファッションの男女が肩を並べて立っていると見える私には、「乳牛か!」と批判する資格はありません。

 「いいえ、この事務所は内部もすごいのです。乳牛に4つの胃があることはご存知ですね。このビルは外観だけでなく、内部には乳牛の内臓をイメージさせています。このビル内はどこへ行くのも一本道。お客様は事務所や会議室など全ての部屋を通り抜けながら応接室へ進んでいただきます。そして御用の済んだお客様は排泄物さながらに裏口から出て頂きます。」

 もしもこのビルに、こういうドンデン返しがあったなら、私は座布団を1枚届けなくてはなりません。


 元のビルには、タバコの匂いが染みついたスーツ姿の7:3分けのオジサンを連想してしまうのです。グレーともブラウンとも判断のつかない色のスーツを着たオジサンを。
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