建主のNさんは、この屋根のお陰で雪下ろしから逃れることができたでしょう。普通、片流れ屋根といえばフラットに流すことがお決まりなのですが、この住宅のように両脇を大きく折り曲げることで程良く3方向へ落雪をさせることができるのかもしれません。また、風を受ける翼のような形が、田上先生の作品とは違う味わいの飛翔感を思わせてくれます。
2階窓上のガラリが、幕板に装飾された柄で上手く存在感を消されています。その柄は単純化されたハーフティンバー風のアール印と×印です。
おっ、この×印は前田建築研究所 前田敏雄さんの足跡ではないですか。ブロック塀の窓にも登場する×印、きっと前田さんの設計に違いありません。無落雪屋根を発明した前田さんが、雪国の屋根に立ち向かった例と思われ、興味深いです。
世に「和風モダン」という言葉があるが、この住宅にこそ授けたい。