珍建築

chinnazo/2023

庄坊番屋

2023.11.04

小樽市花園2-6-10

1951年

不明
 歴史的建造物の街、小樽。しかし、意外にも戦後モダニズム建築も多く残っていまして、建替えがそれほど盛んではないということもあり、私好みの1950・60年代建築がたくさん現役で使われています。今回は、その中でも前々から気になっていた「庄坊番屋」さんのことを取り上げてみたいと思います。

 初めてこの建築を見た時、2階と3階に長くL字に延びた水平連続窓に目が釘付けとなりました。コーナー部分が1本の枠で納まっているところに驚き、まじまじと見つめました。しかし美しいだけでなく、何かが少しおかしいとも思いました。窓のすぐ奥に鉄筋コンクリートの柱が見えるのですが、窓と柱が近すぎるのです。この建物の設計者は、水平連続窓のデザインにチャレンジしてみたかったのではないでしょうか。つまり、建物は一般的な柱と梁のラーメン構造にしておきつつ窓枠を外壁から少し持ち出し、その中へサッシを無理矢理に組んで水平連続窓風に設えたと見えてしまうのです。

 この「庄坊番屋」という和食店をネット検索してみれば、この建物が元々消防庁舎だったということがわかりました。「庄坊」という店名の由来が「消防」にあるということに気がつくのにも時間のかかってしまった私でした。

消防本部庁舎小樽市史 第6巻より

 1951年竣工の小樽消防本部庁舎が移転して空になった1985年、「庄坊番屋」さんがこれを改修して和食店として甦らせたということです。しかしそのような活用には、明治や大正、もしくは昭和初期の建物を選ぶのが普通と思うのですが、「庄坊番屋」さんはなぜ戦後モダニズム建築を選んだのでしょうか。商売的には木造か石造がマッチしそうですし、古建築の再生という観点からいえば、このような戦後鉄筋コンクリート造の建築を選ぶことは、当時とすればずいぶんと先端を行っているといえるのではないでしょうか。全く謎なことで、この建築を珍建築カテゴリーに記録したいと思います。

モノクロ写真 花園ビル併用消防団庁舎小樽市史 第6巻より

 「庄坊番屋」さんの向かいには「消防本部整備工場」と札のついた建物もあります。小樽市史によりますとこの建物は1961年に花園ビル併用消防団庁舎として建設され、消防車両や消防設備の整備を行う工場としても機能していたそうです。当時あった31mの望楼は現在は先端が短くカットされているようでした。
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