建築年表 住宅編

1962

N邸

1962年

札幌市南区藤野

現存せず

飯田勝幸

竹田組

「建築文化」1963年3月号 彰国社 より

 長い冬を室内で楽しく暮らす。今では当たり前のことも当時はまだ目指すべき生活環境でありました。この住宅は、レンガ造のペチカをパーテーション代わりに設置することで有効面積を減らすことなく暖房効率をあげています。また、冬場の日光も活用しながら防寒構造と2重窓で熱損失を少なくなるように計画しています。1階の居間とその上2階縁側に設けられた大きな開口部は、周囲の壁より奥に引き込まれています。こうすることで日光を取り入れつつも、冷たい外気にさらされることを防いでいるということです。

「建築文化」1963年3月号 彰国社 より
太陽に向けて傾けられた窓が 冬場の日光の温かさを室内に取り入れてくれそうです

 明るい室内は住まう人の健康と意欲溢れる心を育くみ、庭を眺めながら朝食をとればそのおいしさはますます高まり、昼下がりのお茶からは豊かな情緒が形成されそうです。このように営むことのできる生活があれば、あとはもう何も要らないといった気持ちになりそうです。

「建築文化」1963年3月号 彰国社 より

 そのような生活を守る外部にも工夫が凝らされています。設計者の飯田勝幸さんはコンクリートの基礎を1階腰まで立ち上げ、土台や外壁を傷まないようにしました。また屋根から落ち積もった雪が建物に悪さをしないよう、裾を内側に絞った形としています。防寒や自然への対処がこのようなデザインに現れ、全体のバランスを組み立てていくという設計手法に大変納得させられます。また、2階にちょこっと載せられた部屋の形が外観にアクセントを与え、背景の山並みと調和しているように見えるのにもまた唸らされます。

「建築文化」1963年3月号 彰国社 より

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