北方建築 VOL,3 No.6 より
三菱地所北海道建設事務所の2代目所長として、1956(S31)年から1965(S40)年までの9年に渡り、戦後北海道の設計業界で尽力された林哲夫さん。この住宅は三菱地所の所長社宅として、そこに住む林さんご自身が設計されたものだそうです。
林さんは前任の小野田敏夫さんが8年で本社に戻った後を引き継いだので、同じくらいの札チョン生活と想定されていたのではないでしょうか。赴任3年目で自分の家を設計せよとの会社命令を受ける男の気持ちを考えますと、北国での勤務が長いものになるだろうことを後ろ向きに捉えるものではないでしょうか。ところがこの住宅を見ますと、林さんのやる気満々のデザイン表明と家族向けの間取りに裏打ちされた覚悟が感じられるのです。