外壁にある２つの「１９６１」のマーク。このマンションが元々は１９６１年の建築であることを示し、むしろ古いがゆえの格を説いてくれているようです。レトロな鉄筋コンクリート造に大きなガラスが組み合わされ、チャコールグレーとアイボリーの２色に塗り分けられた外観にモダンさを感じます。そして気の利いたショップや生活感を感じさせない入居者の方々が、このマンションを更に特別な雰囲気に仕上げています。

　しかし、１９６１年のマンションとは何なのでしょうか。その時期にはまだマンションは建っていなかったはずだと腕を組んだのですが、以前ここに暮らしていたＫuさんＨiさんから伺ったところによれば、この建物は昔々丸井今井の従業員社宅だったというのです。古い住宅地図や丸井今井の社史を確認しましたところ、確かにその通りなのでした。社史によればこの建物は１９６０年９月の竣工とされていますが、何かの事情で１９６１年扱いになっているのかも知れません。

　それにしてもこのリノベーションはどなたのプランで、いつ行われたものだったのでしょうか。建物の姿には何となく、ぱぱっと描いたスケッチがそのまま実現したかのような溌溂さや勢いの良さが感じられます。私には例のＯさんの仕事跡のように感じられてならないのです。