建築年表 住宅編

chrono/1961

宮ケ丘の家 O邸

chrono/1961年

札幌市中央区宮ヶ丘

2021年解体

Oさん御本人

大成建設 北海道支店

新住宅 昭和37年11月号より

 かつて新住宅社から発刊されていた「新住宅」という雑誌は、戦後すぐの1946年から始まった住宅専門雑誌です。優れたデザインや工夫の凝らされた住宅が数多く掲載され、特に1950年~1970年にかけては私好みの作品が目白押しです。発行人の小林清さんは「寒地住宅図譜」というシリーズで北海道の住宅も取り上げてくださいました。記念すべき初掲載作品として上遠野徹先生の第1作目「高橋邸」が選ばれましたが、北海道で活躍する建築家にとって「新住宅」に掲載されることは誇りとなったことでしょう。

 さて、この「宮ケ丘の家」も寒地住宅図譜シリーズの初期に掲載されたものです。

新住宅 昭和37年11月号より

 この住宅は設計者のOさん御自身のもので、後に某大手設計事務所の社長をされましたが、この時は個人名で発表しています。Oさんは設計にあたり「あまりにも防寒構造にこだわりすぎて、閉鎖的な陰うつな住空間におちいることは感心できません。」と、このような大きな窓ガラスの連続した自邸を説明しました。

新住宅 昭和37年11月号より

 RCラーメン構造を基本としながらドリゾールブロックとロックウールで断熱し、ペアガラスと2重窓で熱損失を抑えたそうですが、やはりこのような対策を行うと設計の自由度は本州のようにはいきません。北海道の建築家にとっての住宅設計とは、断熱設計に頭をひねりながらデザインのオリジナリティをどのように表現するかという長い戦いだったといっていいでしょう。

 「暖房はペーチカを主に石油、ガスストーブを補助的に用いて、1冬過ごしましたが、主要室の採暖はほぼ充分で、水道、水洗便所の凍結も起らず、大体満足すべき住み心地の様です。」ということでした。

 とても美しい状態で残っていましたが、2021年に解体されてしまいました。

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