空中に浮いた木造平屋建て。このたまらなく甘い響き。

　新建築1963年12月号「北海道の建築」特集に小さくこっそりと載っているＡ邸。ホッケン研のハッシーが無言でこの住宅の画像を指さしながら、私に注目を促したことを思い出します。目をこすってよく見てみれば、戦後モダニズムらしい外観をとりつつ、軽やかに浮かんでいるではありませんか。真駒内と建設地がクレジットされているのを頼りに車へ飛び乗り、現存を確認することができました。

　住宅を地面から離せば、深く降り積む雪やじめじめした基礎から解放させることができます。しかし、それは理想論であって、実際に住宅を建てるなら２階建てとなってしまうでしょう。より多くの部屋数を確保したくなるのが普通の感覚なはずです。この住宅を設計されたＡさん、どんな熱意でこのデザインに取り組まれたのでしょうか。

　訪問取材のかなわなかったＡ邸。お訪ねするにはもっと早く出会わなければならなかったようです。