本郷新さんからデザインの了解を受けるために描いたと思われる階段のスケッチ本郷新記念札幌彫刻美術館 所蔵
本郷新アトリエは、これまで見てきたように上遠野先生と本郷新さんの濃密な応答作業を繰り返して形づくられたといえるのではないでしょうか。濃密になればなるほどデザインは複雑化していき、素直に見ることのできない難解さとして迫ってきたと思われます。本郷新さんは、あらかじめ自分で平面図や外観図を描き、要望をかなり具体的にまとめることのできる方だったようです。設計者にとっては施主の要望が具体的であるほど、自由な発想に制限がかかるものではないでしょうか。そのような難しい施主に立ちまわりつつ、自身の妥協も許さなかった上遠野先生。数々の要望を受け入れつつデザインが破綻しないように努力したからこそ難解さが現れたと見ることもできますし、逆に破綻しないように持ち堪えた上遠野先生のデザイン力が現れていると見ることもできそうです。