上原さんより
上原さんはホテルアルファサッポロの解体に際して、その実測を我々に?
そうだ!ホッケン研メンバーの照井さんは建築意匠の歴史を専攻されていたから実測はお手の物のはず。きっと力強く指揮をとってくれるだろうと照井さんをチラと見ました。しかし私は知っています。照井さんの学生時代の記憶から、なぜか実測実習が消えていることを。
そんな心配をしていると、上原さんがホテルアルファサッポロの設計図を見せながら話をはじめてくれたので、実測の必要はないとホッとしました。
「フランクロイドライトの弟子たちは意匠の面ばかりで、ストラクチャーの面は全くと言ってよいほど受け継いでいないのだよ。」
学生の時からライトが好きで、まだ解体前の帝国ホテルにも行ってみました。有名なロビー空間は一般的な2階高の中に3層が入っています。低い天井だけれども、広がりを感じられるような工夫がされていて狭さは感じないですね。構造設計に興味のあった私は、この「旧帝国ホテルの実證的研究」で明らかになったライトのストラクチャーテクニックにすっかり参ってしまいました。
ホテルアルファサッポロは、帝国ホテルから大いに影響を受けて設計したホテルです。
伸びやかなロビー空間を実現するためにどうしたら良いか、高さ制限のある中で求められた複数の宴会場と客室数をどう実現したら良いかを考え、SRC造でプランすることにしました。ロビーのある低層部は鉄骨の大梁で大空間をつくりながら梁をあえて意匠として見せることで各階の高さを詰めています。ロビーから隣のラウンジを少し下げ、さらに隣のレストランを下げて広がりのある空間をつくり、天井の大梁からバー空間を吊り下げました。極めて天井高の低いバーですがね。(笑)これで伸びやかな空間はできますが、設計よりも難しいのは施主を説得することなんですよ(笑)。
客室の壁はRC構造壁にしつつ壁上部に小さな鉄骨梁を渡すという組み合わせで客室の階高を2.9m以内に抑え込みました。ここでも梁型を意匠として使うことで、室内の天井高を確保しました。
外壁については低層棟には打込タイルを使っています。札幌で初めて設計する建物でもあり、凍害の心配をさんざん脅されていたからなのです。後貼りのタイルでは剥落するとね。高層棟についてはタイルを打込んだPC版を使って仕上げました。外壁を全て炻器質仕上げにするなんて高額になっただろう、さすが全国長者番付1位のオーナーならではだと噂されました。実際には噂ほどはかかりませんでしたがね。
建主は、関兵精麦という仙台の会社だったのですが、担当の関光策さんがこうしたデザインに理解を示してくれる方だったのです。模型を作ってプレゼンテーションをしましたが、1発でOKを頂きました。