明け方まで飲んだくれた後、照井さんと2人で朝風呂に向かいました。誰もいなく、まだほの暗い静かな浴場。むせ返る程、湯気が濃密に充満し、しばらく攪拌されていない湯の表面が異常に熱くなっていました。
「しかし見れば見る程、意味不明ですね・・・。」
深夜に照明を消して湯に浸かれば、月明かりで金箔タイルが妖しく光るのかも知れません。金屏風は闇の中でこそ美しく浮かび上がる、と何かで読んだような気がします。そんな優雅な事を思い巡らせているうちにのぼせて来ました。
「先にあがりますよ。」
脱衣場でゆっくりして、照井さんがあがってくるのを待ちました。なかなか来ないので、ロビーでも見学しようかと脱衣場を出ようとすると、すっかり湯冷めした照井さんが私を迎えに来ました。遅い私の様子を見に来たというわけです。
もう少し粘って湯に浸かっていたら、金箔モザイクの秘密を教えてくれたのではないでしょうか?湯船でウンウンと私の話相手をしてくれた人は、きっと田上義也先生だったに違いないと思うのです。