道南杉を組んだ中にらせん状の足場が確認できる
海上保安庁発注による戦災復旧工事のひとつ。指名競争入札で受注したこの工事は、竹中工務店としても初めての灯台工事となったそうです。
灯台の建つ場所とは陸の孤島となるだけに、物資運搬の為に道路や橋の整備から始めなければならない状況だったそうです。上遠野先生は現場の物置を改造して文字通り常駐作業員として寝泊まりし、設計・監督だけでなく自らコンクリート練りや打ち込みまでされたそうです。らせん状に組んだ外部足場を両天秤にモッコを担いでくるくると上まで登って打ち込む肉体的疲労も想像を絶するものだったでしょうが、設計の方も大変に難しく、先端へ向かって徐々に細くなる二重構造の壁体の間を階段が取り付くという灯台独特の形状を図面に起こしたり、型枠を作ったりと相当な苦労だっただろうと思われます。
ところで、この現場から海岸へ降りたところには、何と天然の温泉が湧いていたとのことです。疲れを癒やせる環境のあったことが、完成までの救いになったことでしょう。