上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1957

北海道日産自動車㈱

katono/1957年

札幌市北区北6条西5丁目3

現存せず

竹中工務店北海道支店
 現在のヨドバシカメラマルチメディア札幌の場所にあった北海道日産自動車社屋。当時、函館本線をまたいでいた跨線橋「おかばし」の途中から直接玄関へアプローチできたそうです。5階建てで、玄関のある2階と中のロフトがショールーム(陳列所)になっています。

北方建築VOL,1より

北海道日産自動車50年史より

 夜景の外観写真を見ると、奥まで視線の引っぱられる透明感が印象的です。コンクリートの柱は建物内部に引っ込められて、建物の外部に柱のない姿となっています。でもこれではショールームの有効面積が狭くなってしまうという問題が発生します。しかし、その問題よりも美しい外観で完成させることが優先されたのでしょう。当時の建築にありがちな柱と梁でがっしりと見せるのではなく、ガラスでできた建築の各階腰壁だけに帯状の外壁がぐるりと回っている、そのような外観を目指しているようです。華奢で繊細なデザインはビル裏側西面の外壁を全面のコンクリート打ち放しとすることで、構造力を保っていたのだそうです。

ダットサントラックU220型 667,000円!北方建築VOL,1より

 透明デザインの狙いは、建物の角にカーブした窓を仕込むことで一層強調されています。ショールームの階段は段板が宙に浮いたようにデザインされ、大きく曲げた手摺がカーブするコーナー窓と調和を見せています。外部は透明で薄い壁面、内部の設えも軽く、そのような質感です。

 カーブ窓は、当時すでにそのような商品があったのか、それとも何とか工夫して制作したのか、はっきりと映った写真を見てみたいものです。また、腰壁には青いタイル貼りがされ、ブルーペンガラスの採用された外観はとてもクールな青い表情だったはずで、カラー写真もまた見てみたいものです。7年後に完成した青い札幌パークホテルを見た上遠野先生、坂倉さんと共通する感覚に頷かれたに違いありません。

宙に浮いたアールの階段と大きく曲げられた手摺北方建築VOL,1より

 技術がウリの日産自動車との仕事の中で、上遠野先生は建築に応用できるヒントをいくつかもらったのではないでしょうか。自邸で有名なペアガラスのガスケット納めの技は、自動車の窓ガラスはめ込み技術にその原点があると思われてきます。

整備工場北方建築VOL,1より

 裏の整備工場もまた素晴らしいです。ここまで透明建築に憑りつかれた上遠野先生のデザインの根源は、一体どこにあるのでしょうか?アーチの屋根には雪止めの仕掛けがされていますが、ガラス建築の屋根にたっぷりと雪が積もった姿を想像すると、危なっかしい美しさだったろうと思われます。

昔の広告 「おかばし」からのアプローチと建物角の丸さがわかります

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