ザラリとしたレンガ壁とツルっとしたコンクリートが互いを引き立てあう「新建築」1961年12月号より
その
レンガ壁に注目してみます。レンガの両端がスリット窓でコンクリートの柱から離されている点が、この壁は構造体ではなく帳璧であると語っているようです。もしもこのスリット窓が無く、コンクリートの柱梁間がレンガで埋めつくされていたとしたら、重厚な存在感を発揮する代わりに、とんでもない息苦しさを見せつけたと思います。恐らく、存在感を感じさせながら、同時に軽快さも表現することを設計のテーマとされていたのではないでしょうか?
しかし、なぜ縦長のスリット窓なのでしょうか?水平性と浮遊性をより強調するために、梁下に横長窓を配置しても良かったのではないでしょうか?
この疑問への回答と設計作戦の原案は、聖ミカエル教会にありそうです。この酪農学園大学本館に先行して工事をしていたレーモンド設計による聖ミカエル教会。その工事監理に携わられていた上遠野先生は、教会の雁行配置されたレンガ壁とその間のスリット窓から入る光の美しさに捕らわれてしまったに違いないと思います。重々しいレンガの隙間から鋭く入ってくる光がもたらす効果をこの建物に応用、その結果、大成功につながったと勝手な物語を考えてしまうのです。
改修され勾配屋根になった姿は残念で耐震改修の痕は痛々しいですが、今も現役で活用されているのは大変うれしいことです。