上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1960

酪農学園大学本館

katono/1960年

江別市文京台緑町

改修部分あるも現存

竹中工務店北海道支店

竣工時 1960年「新建築」1961年12月号より

2013年の姿 改修され勾配屋根になり耐震改修の痕がついています

 国道12号線から広い緑のはるか彼方に見える酪農学園大学本館。

 端正なコンクリートの柱と梁で囲んだ壁をレンガで仕上げ、自然の中にたたずむ人工美と敷地の緑に対比させた赤レンガを印象付けるような狙いが伝わってきます。そしてこの建物は、上遠野先生が初めて焼き過ぎレンガを採用した建築であると伝えられています。

希望の塔「新建築」1961年12月号より

美しい外観「新建築」1961年12月号より

ザラリとしたレンガ壁とツルっとしたコンクリートが互いを引き立てあう「新建築」1961年12月号より

 そのレンガ壁に注目してみます。レンガの両端がスリット窓でコンクリートの柱から離されている点が、この壁は構造体ではなく帳璧であると語っているようです。もしもこのスリット窓が無く、コンクリートの柱梁間がレンガで埋めつくされていたとしたら、重厚な存在感を発揮する代わりに、とんでもない息苦しさを見せつけたと思います。恐らく、存在感を感じさせながら、同時に軽快さも表現することを設計のテーマとされていたのではないでしょうか?

 しかし、なぜ縦長のスリット窓なのでしょうか?水平性と浮遊性をより強調するために、梁下に横長窓を配置しても良かったのではないでしょうか?

 この疑問への回答と設計作戦の原案は、聖ミカエル教会にありそうです。この酪農学園大学本館に先行して工事をしていたレーモンド設計による聖ミカエル教会。その工事監理に携わられていた上遠野先生は、教会の雁行配置されたレンガ壁とその間のスリット窓から入る光の美しさに捕らわれてしまったに違いないと思います。重々しいレンガの隙間から鋭く入ってくる光がもたらす効果をこの建物に応用、その結果、大成功につながったと勝手な物語を考えてしまうのです。

 改修され勾配屋根になった姿は残念で耐震改修の痕は痛々しいですが、今も現役で活用されているのは大変うれしいことです。

1階の廊下

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