上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1961

聖ベネディクト女子学園高校

katono/1961年

室蘭市高砂町3丁目

現存

竹中工務店北海道支店

竣工時1961年国際建築 1961年12月号 美術出版社より

国際建築 1961年12月号 美術出版社より

 室蘭の八丁平から緩やかに下りてくる丘の中腹、太平洋を望むことのできるロケーションに建つ学校建築群があります。アメリカの聖ベネディクト会修道院が日本での教育を始めるにあたり、この伸びやかな敷地を選び、幼稚園から大学までの女子一貫校を計画したのだそうです。

 まず最初に女子高校舎を完成させ、次には体育館を、引き続き校舎群を点在させた配置プランであったと伝えられています。現在は校名を変え、男女共学校として高校と幼稚園の教育活動を続けているそうです。

1961年竣工の旧校舎

1962年竣工の体育館

竣工年不明の新校舎

 校舎の山型屋根が印象深く、上遠野先生らしい人工美デザインです。しかしこの形は、この大らかな緑の芝生の敷地にあるからこそ美しさが引き立つのであって、もしも室蘭市中心部にあったのでは感じられなかったでしょう。屋根の形は、そのまま3階教室の天井に現れ、それと呼応するように窓もヤマタニ型にデザインされています。竣工時は壁面より少し控えたスチールサッシだったのですが、現在はアルミサッシがつけられて壁面に近くなっています。スチールサッシ時代の方が彫りが深く、重みのある印象が山型屋根とよく調和しています。ですから、スチールサッシのまま残っている校舎に引き寄せられてしまいます。ただしこの校舎は、一連の校舎の中では新しいものだそうで、旧校舎のデザインを踏襲して設計され、上遠野先生の仕事跡ではないのだそうです。

玄関

美しい手摺のある階段

山型の現われた3階の教室

 十字架のある玄関ポーチは吹抜けになっています。その十字架はほとんどその存在を感じさせないほどシンプルで、屋根まで伸びた柱にちょこんとくっついています。廊下に面して各階にバルコニーが設けられています。

 このバルコニーに女子学生が並んだ姿を想像してみます。十字架の背景に並んでいる姿をです。戦後生まれで普段は明るく無邪気な彼女らが、カメラの前だけはおすまし顔になっている様子が思い浮かんできます。昔の卒業アルバムを見てみたくなります。
Top