上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1961

富士製鐵室蘭健康保険組合 体育館

katono/1961年

室蘭市輪西町3丁目

現存

竹中工務店北海道支店

野球場と体育館 温水プール「建築文化1963年1月号」より

 当時、日本第2位の鉄鋼会社だった富士製鐵株式会社の健康保険組合事業として、室蘭市に野球場と体育館、そして屋内プールが計画されました。上遠野先生は、カックカクで彫りの深い体育館とそれに呼応するかのように優美な弧を描いた屋根を持つ屋内プールを設計されました。その対比の美しさもさることながら、2つの施設は高度な設備で快適な室内環境を実現していたということです。

竣工時の体育館「建築文化1963年1月号」より

現在 2017年

 体育館は屋内運動の他にも集会・演劇・音楽会・映画上映の目的があり、3方に客席と正面にステージを持っています。その目的を実現するため1辺が48mの正方形の平面となり、各辺に立てられた2本の主柱の先端に井型の鉄骨トラスを組んで大空間を得たそうです。

 正面3階は大きく屋根のかかった半外部バルコニーになっており、コンクリート打放しの柱梁の構造美が引き立たされています。2本の主柱も溝を切って野太く見えないように配慮され、バルコニーの腰壁も穴開ブロックを使って繊細な肌触りを見せています。雪の少ない室蘭ならではのデザインです。札幌でこれをやれば凍ったり融けたりする雪のせいで半外部バルコニーや穴あきブロックは遅かれ早かれ傷んで崩れてしまうでしょう。

「建築文化1963年1月号」より

 天井には音を拡散させるための角錐型の音響版、天井面や壁面は吸音効果のある材料を貼り、音響特性を最適に図ったそうです。また、工場の炉から発生する潤沢な水蒸気を活用し、温風暖房で館内をあたためたのだそうです。。通常であれば再循環空気で熱損失を少なくしますが、この施設では100%の新鮮空気を使ったり、床下にまで温風を循環させるという贅沢さだったようです。

竣工時はもっと軽やかだったはずな入口

側面の壁はレンガ仕上げ ポツ窓がかわいらしかった

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