上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1962

川上邸

katono/1962年

札幌市中央区北9条西21丁目

現存せず

竹中工務店北海道支店

「上遠野徹住宅作品集」 1981年より

 某自動車販売会社の社長自邸。南面に大きな窓が連続してついた吹き抜けのある住宅です。玄関前のポーチまでかぶさるように、片流れの大きな屋根が掛かっています。この余裕溢れるおおらかなデザインがたまりません。

 この家の主となった私を想像してみます。
 雨の日の朝、軒先から滴る雨だれの脇を通って、運転手が差し出す傘に入り込みます。誘導されながら、ちょうどこの年に発売されたばかりのプレジデントの後部座席へ滑り込むのです。静かに発進した車内で新聞を広げ、煙草を燻らせる私。恐らく私には、後部座席が広すぎるでしょう。

 内外共に木材をふんだんに使ったという川上邸。写真を見てみたいです。

「建築文化」彰国社 1963年3月号より

 後日談・・・
 北海道大学工学部の図書館。土日祝日が休館なので、サラリーマンの私には利用することができないのです。ここなら「川上邸の写真」を発見できるに違いないと考えていた私は、脱サラの慰安をここで過ごそうと決めていました。

 先日、ついにその慰安を実行に移しました。
 川上邸の竣工は1965年のはずなので、1965年から1969年までの建築雑誌に掲載されているだろうと見当をつけ、片っ端の建築雑誌を捲ってみました。しかし、どこにも掲載されていません。まさかと思い、今度は1965年から遡って見ていきます。力尽き、諦めかけ、これを最後にしよう、いやもう一冊見て最後にしよう、と手に取ったのがこの1冊。目を充血させ、やつれ果てて、コピーの申請をしたのでした。

2013.1.10

車は初代セドリックでした「建築文化」彰国社 1963年3月号より

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