上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1963

大昭和製紙健康保険組合体育館

katono/1963年

白老郡北吉原

現存

竹中工務店北海道支店

2層の体育館 2階側面は全てガラス張りとなる

入口風除室はいつもの形 

重々しい体育館を軽い1階で支えているように見せるトリック

 大昭和製紙が白老に北海道工場を建てることを決めると、ゼネコンというゼネコンがこぞってその建設に手を挙げました。工場が得意なゼネコン、社屋が得意なゼネコンがそれぞれの持ち場を請負った中、竹中工務店はクラブ棟と体育館を獲得しました。クラブ棟とは役員や来賓を招いておもてなしをする建物で、なるほどそういう建物はやはり竹中工務店だよなと納得できますが、体育館はなぜなのか、1961年の富士製鐵体育館の実績が評価されたのか、上遠野先生が担当されたと伝えられています。

 体育館は2層になっており、1階は当時流行の兆しを見せ始めたボーリング場を北海道で初めて備え、2階の体育館は壁面を総ガラス張りにされました。総ガラス張りを実現するために、内部は細い鉄骨を組んでガラスフレームと接続していますが、その興味深い様子の写真は内部に入れなかったためにありません。いつもの上遠野先生のデザイン、内部にいながら外部にいるかのような解放感を体育館の設計でもやってしまったのです。

 玄関へのアプローチでは、格子状に組まれた軽々しいサッシ枠の上に威圧感すら感じさせる重々しい体育館が載っているという印象を受けます。もちろん実は反対で、しっかりとした鉄筋コンクリート造の1階に軽い鉄骨造の2階が載っているのですが、パッと見を重厚に見せておいて体育館に入れば驚きの解放感、これを強調させるためのイジワルなテクニックだと思います。建築に興味があれば現地でこのテクニックを味わうことができるのでしょうが、普通の人は家に帰った後で、よくわからないけどすごい体育館だったなあと思い出すことになるのでしょう。


 「それでいいんです。そこを目指しているんです。」
 私の知っている何人かの建築家の方々は、そう教えてくれました。
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