札幌のテレビ局への就職を機に、東京から札幌へやって来られた皆藤御夫妻。札幌での新婚生活を始められたある日、建築雑誌に掲載された「栗谷川健一邸」にすっかり魅了されてしまった奥様は、その設計施工を請負った「竹中工務店」の「上遠野徹さん」に自宅建設の相談をしようと一念発起されたのだそうです。
小さな工務店と思っていた奥様は、生まれたばかりの赤ん坊を背負ったまま大通西6丁目(当時の竹中工務店所在地)にあった4階建の立派なビルを仰ぎ見て、本州企業の建築会社と初めて気がついたのだそうです。躊躇心を振り捨てて上遠野先生を訪ねた奥様に「外でお伺いしましょう。」と喫茶店へ導かれた時は、それが了承のサインと理解でき、一安心されたそうです。当時は、組織に所属していながら個人的に仕事を請負うことも広く認められていたという時代の生々しいエピソードです。