上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1963

真木邸

katono/1963年

札幌市中央区宮の森4条7丁目2-48

現存せず

竹中工務店北海道支店
 老舗呉服店の社長宅。片流れ屋根の外観ですが、栗谷川邸とは構造が違います。鉄筋コンクリート造で可能となった大開口の窓が居間の南面・西面に採用され、ますます開放度が上がっています。障子を開け放てば、三角山を望むことができたでしょう。その様子を見てみたいのですが、写真の資料が無いところをみると、あまり良い眺めにはならなかったのかも知れません。

「北国の住まい6」 建設情報社1965年より

「北国の住まい6」 建設情報社1965年より

 外観は一見、三角の塊ですが、1階に屋根が掛かっています。やりすぎではないかと思えるくらいに大きく広げた和風の屋根です。意表を突いたデザインが、強烈な印象を残させます。大胆かつ繊細、重厚かつ軽やか、現代的かつ伝統的、相反する数々のイメージがまるで重ね刷られているようです。

「北国の住まい6」 建設情報社1965年より

「北国の住まい6」 建設情報社1965年より

 呉服屋の社長宅だからといって素直な和風住宅では、ひねりが無いでしょう。

 コンクリートで家を造るという発想がまだ一般的では無い時代に、その決意をした施主の真木さん。RCの家にわざわざ木造の屋根を掛けるという、一歩間違えると失敗の危険を孕む設計を選択した上遠野先生。お二人の緊張感が、この住宅を別格なものにしているようです。
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