上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1963

北海道拓殖銀行 円山支店

katono/1963年

札幌市中央区北2条西23丁目

現存せず

竹中工務店北海道支店

「北海道拓殖銀行史」 1971年より

 戦後の拓銀支店建築といえば、亀井勝次郎さんがその多くを手掛けられたと伝えられています。亀井さんは拓銀の管財課に在籍され、店舗設計にとどまらず拓銀のロゴや店内の家具デザインまで総合監修されたそうです。同じく早稲田大学理工学部建築学科卒の今井兼次さんとは15歳も離れていますが、北海道に亀井君ありと亀井さんを高く評価されていたと伝え聞いたことがあります。今井兼次さんが4歳年下の早稲田工手学校卒である田上義也先生をどのように思われていたか知る由もありませんが、田上先生は北海道銀行と太いパイプを築かれたのですから、亀井勝次郎さんも田上先生も銀行の仕事に深く携わられたという点に興味深い因縁を感じます。

 さて、この拓銀円山支店、亀井勝次郎さんの作品という事になっていますが、竹中工務店の施工、そして設計担当は上遠野徹という記録があります。

 はね出した3階は、連続する窓が角をカクカクと廻って2面を繋げています。一方、1階から2階へ伸びる方杖がそれぞれの壁を区切って、複雑な影を作り出しています。当時の拓銀支店建築に比べると、この円山支店は一際凝ったデザインに仕上がっています。上遠野先生による前年の北の誉社屋との類似点も感じられます。白タイルと思しき壁面と羽目板で仕上げられたように見える3階のサッシ周りの対比バランスと素材感の追求もいよいよそれらしく感じられてきます。恐らく亀井さんが基本計画を担当され、上遠野先生が実施デザインを決めたのではないかと思われるのです。
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