上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1964

X邸

katono/1964年

不明

現存かどうか不明

竹中工務店北海道支店

「北国の住まい 第5集」 1964年9月発行 より

 中島邸に似た雰囲気の木造住宅。

 庭に向かって、居間は3間、隣の客間も2間を連続させて開いています。コンクリート製の万年塀の内側は、わざわざ吹き付け塗装で仕上げてあったそうです。恐らく、小宇宙の庭空間が閉鎖的に完成されていたのでしょう。どんな色やテクスチャーの塀だったのか、そしてどのような庭だったのか非常に気になるところです。

 2階のバルコニーにある華奢な手すりに目がとまります。やんちゃな子供なら、細い木製手すりをすぐに壊してしまったでしょう。立体的な壁面を持つ2階建て住宅を大きな屋根ですっぽりと守っているところが上遠野先生らしいデザインと思います。

 2階の屋根から垂直に下がる方立のような壁は、何のためなのでしょうか?北風を遮るための壁だったのでしょうか?

じめじめ感のない玄関

ペチカで間仕切りされた居間と食堂

 吹抜けの階段は、空中に浮いた踊り場へ向けて段板が並んでおり美しいです。玄関扉の隣にある天井から床までのガラスが、土間を明るく照らし出して爽やかです。さらに、居間・食堂すべてが光に満ちあふれています。そういえば、上遠野先生の住宅作品写真で初めて確認できたテレビの存在。その位置では、外部の光が反射して見にくいでしょう。きっと撮影時に移動したのでしょう。

 施主名、建築場所、現存かどうかなど一切不明の謎住宅です。そして建築年は私の勝手な推定です。アンティークマニアに尋ねれば、テレビの形式から建築年を絞り込めるかもしれません。そして、札幌建築鑑賞会さんに尋ねれば、隣に建っている蔵をヒントに建築場所を確定できるかもしれません。
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