上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1969

ソ連総領事館

katono/1969年

札幌市中央区南14条

現存

竹中工務店北海道支店

北海道建築設計監理協会作品集 ARC70

現在2017年 正面

裏から

 北海道インテリア研究所の山本桂さんから、ロシアのお茶会に誘って頂きました。場所は在札幌ロシア連邦総領事館で、開設50周年の記念に行われるものだということです。その建物が上遠野先生の設計によるものということを桂さんもご存じだったのです。私は、めったに入ることのできないチャンスだということと、ロシアの方々との交流方法の想像がつかないことを天秤にかけました。もちろん「おじゃましたいです!」と答えたのですが、家に帰ったらロシアのお茶とは何?という事から調べなくてはならないのでした。

 正装して警備の方にお茶会に参りましたとお辞儀しました。鉄格子の門を開けてもらい「どうぞお入りください。サロンの方へどうぞ。」と玄関へ促された時、背の高いロシア人女性に引きずられてワルツを踊っている自分の姿が思い浮かんだため、やっぱり家に帰ろうと思いました。後ろを振り返れば、鉄格子は大きな音をたてて閉まり、警備の方はおっかない顔をして直立不動の姿勢に戻っていたので、覚悟を決めて入ることにしました。

 1階奥のサロンに入りますと、ロシア人の女性が「ロシアのお茶とは紅茶なのです。1日に何杯も飲みます。」と日本語でプロジェクターを使ってにこやかに説明していました。サロンは2層吹抜けの空間で、天井には立派なシャンデリアが2つ付いていました。竣工時にテラスだった場所はその後の増築工事で室内空間になっていて、色とりどりのお菓子や果物の乗った円卓がたくさん並んでいました。

 「あそこでお茶とお菓子を頂けるのだろう。ワルツは踊らなくても良いみたいだ。」とほっとしました。

ピロシキや砂糖菓子、タルトなど

お湯を松ぼっくりで沸かすので、独特の香りが付く

 外観は窓が端正に並んだ姿で、後年のヤガワビルを彷彿とさせました。タイル張りだった外壁は現在は張替されており、1階部分は基壇のように一回り大きくなっていました。2・3階は事務所で4・5階は館員の住居スペースであることは、当初から変更がないとの事です。1967年に開設が決定し1969年に竣工した時、付近にはまだ高い建物がなく、一際威厳を放っていたそうです。

 お茶会も終わりになろうとするとき、桂さんのムックリ演奏や鳥羽さんの佐渡舞踊が披露されました。ここでは小林旭や森進一のカラオケは全く通用しないのです。私は名指しを受けないように下を向いて縮こまりながら、1つくらいインターナショナルな芸を持っておかなくてはと準備不足を後悔しました。
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