上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1971

大滝 重美邸

katono/1971年

釧路市浦見

現存

東海興業㈱

「上遠野徹住宅作品集」 1981年より

 一流の建築家と一流の施主が出会うと、何が起こるのか?

 北海道大学で林学を専攻し北海道の木材をこよなく愛したという大滝さんが、竹中工務店北海道支店のドアを開け、まさに独立せんとされている上遠野先生に会い、ドラマが始まったのです。家具やインテリアにも造詣の深い大滝さんは、自分の座るイスを中心にして広がり展開する空間作りを希望されたといいます。RC壁構造で14室もの部屋を抱える大住宅ですが、硬さを感じさせない軽快さに溢れています。玄関前のピロティでは、ヘリンボーンにデザイン貼りされたレンガタイルの床とスタッコ塗りの外壁が、それぞれ繊細な影を作って調和しています。

「上遠野徹住宅作品集」 1981年より

「上遠野徹住宅作品集」 1981年より

「上遠野徹住宅作品集」 1981年より

 室内を見てみると、艶やかなシルクカーペットに並ぶ北欧家具の数々に圧倒されます。要所要所に配された美術品、そして、壁に架かる絵画 福沢一郎の「バッカス」の不思議な魅力に惹きつけられます。

「上遠野徹住宅作品集」 1981年より

「上遠野徹住宅作品集」 1981年より

「上遠野徹住宅作品集」 1981年より

 しかし、何といっても強烈な印象を与えてくれるのは屋根の形状です。まるで1969年の笹川邸で消化不良を起こしたデザインが、大滝邸で美しく花開いたようです。緩い勾配でスタートした屋根が、その先端で更にお辞儀をして薄く伸び切っていくのです。横風に乗ってフワリと浮かび上がりそうでもあり、雪が少しでも積もれば折れてしまうのではないかと心配になるほどの危うい繊細さに縮み上がりそうになります。

 ともかく上質を知る男達の造った住宅が完成したのです。 
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