上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1977

本郷新アトリエ

katono/1977年

札幌市中央区宮の森4条12丁目

三上建設
 観覧料を払えば、上遠野先生の空間をいつでも自由に堪能ができる本郷新アトリエ。それなのに、数度しか足を運んでいませんでした。上遠野先生の設計される住宅には、木造や鉄骨造、そして鉄筋コンクリート造それぞれに上遠野先生らしい空間と見所があります。どの住宅にもそれを期待してしまう私にとって、この本郷新アトリエは期待通りではないといいますか、いつもとは異色のデザインが感じられて、近寄りがたかったのです。

 私の期待するデザインは、まずは大開口の連続窓の存在です。本郷新アトリエには雁行する部屋群があるにも関わらず、縦長の窓があるばかりでそれがありません。いつもならそのような窓で外部を見渡せさせたり、各室を関連付けたりするはずなのです。彫刻家のための住宅兼アトリエという特殊性が、大開口による大量の光を拒んでいるのかも知れません。さらに階段や造作部に繊細な納まりがありませんし、逆に空間に妙な重みが感じられます。上遠野先生が、意図的にいつもらしさから離れていっているような感じがするのです。これは一体何なんだ、というのが近寄りがたい理由でした。

 このたび、本郷新彫刻美術館で開催された「建築家上遠野徹と本郷新の宮の森のアトリエ展」の展示に携わることができ、その準備の中で本郷新アトリエの近寄りがたさの理由がずいぶんとはっきりしました。上遠野先生は最初は私の期待通りの設計をしようとされていたこと、現在の姿は変更を何度も繰り返した最終形の姿だったことがわかりました。そこへ行きつくまでの物語もまた大変興味深いものでした。建築家と彫刻家の静かな闘いが最終形に深く反映していたのです。

初期のプランは、やはり大きな窓が連続していました本郷新記念彫刻美術館所蔵  

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