上遠野 徹 作品アーカイブス

katono/1978

北海道デザイン研究所

katono/1978年

札幌市中央区北2条西20丁目

現存せず
 北海道を代表するグラフィックデザイナーとして活躍された栗谷川健一さんは、1962年に北海道初のデザイン学校「北海道デザイン研究所」を設立し、北海道ドレスメーカー女学院の教室を間借りして後進の教育にも尽力されました。この建物は「北海道デザイン研究所」の新校舎として1978年に建設されたもので、その後「北海道造形デザイン専門学校」に改組され、2015年に閉校となるまで約6000名が卒業されたそうです。

 建物隅にある鉄筋コンクリートの丸柱が、上遠野先生の新しい表現として登場しました。丸柱付近はえぐられて、2F3Fには小さなバルコニーが設けられています。休憩時間と思われる時、ここで押しくらまんじゅうさながらにタバコを燻らす生徒達をよく見かけたものです。所狭しとした喫煙生徒の様子をほほえましく思ったものです。この後、上遠野先生はいくつかの作品で丸柱の可能性を試されましたが、この校舎も一連の流れの中のひとつだったと思われます。

 この頃「人にやさしい」という言葉が世に出始めて、建築デザインにも影響を与えたのではないでしょうか。1980年代になって角の丸いビルや曲面の壁のある建築が増えたのですが、エッジの効いたデザインが真骨頂の上遠野先生でさえも時代の空気を敏感に読み取ったのではないかと思われます。
 閉校間際に1日見学会が行われて、参加させていただきました。教室内に入りますと、いつもの連続窓がお出迎えしてくれました。丸柱を避けるようにL字につながる窓、そのような解放感が創作の手助けになったのではないかと思われました。
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