1954年「写真アルバム 札幌市の昭和(いき出版)」より
この写真の撮影者は、何を撮ったのでしょうか。
撮影場所は、角度と高さから推察するに当時の札幌市役所屋上からと思われます。右側に写っている札幌中央警察署を狙うなら、普通は正面を撮るでしょう。恐らく、中央警察署とその奥に映る白い建物を一緒に撮りたかったのではないでしょうか。
白い建物は、児童文学者として有名な和田義雄さん経営による喫茶店サボイアでした。喫茶店が警察署の目の前にあるという立地は当時の常識を大きく破るものであったそうですが、和田さんの発行する小雑誌「窓」に引き寄せられ、街の文化人が絶え間なく訪れたとのことです。撮影者はまさにこの状況を記録したかったのではないかと思われます。
この建物は、後年に無落雪屋根を発明した前田敏雄さんの設計によるものでした。煤けた板張りやモルタル塗りの街の中に颯爽と現れた真っ白な建物。水平ルーバーのあるファサードに大きな窓がはまっているように見えますが、デザインも最先端モダンです。
和田義雄さんの執筆された「札幌喫茶界昭和史」にもサボイアのことが回想されていますが、そこに掲載された外観スケッチは下記のようなもので竣工時とは外観も大きさも、そしてデザインも違うものでした。
これは一体何なのか?