建築年表 公共編

kochizu/1958

北海道庁本庁車庫

kochizu/1958年

札幌市中央区北1条西7丁目

1991年頃解体

北海道公営課 廣田基彦

山口建設

車庫屋上北方建築VOL.1 No.2より

 変わった形の車庫があったことを覚えていますかと、話題になることのある北海道庁本庁車庫。役所関係の建物にしては構造デザインが前面に押し出されたものだったという昔話を聞くにつけ、どなたの設計だったのかと思いきや、廣田基彦さんの仕事跡だったのです。

1階に電動シャッターのある運転員用共同住宅北方建築VOL.1 No.2より

 これは、北海道警察のパトカーや白バイ、道庁の乗用車などの車庫とその運転員のための共同住宅として計画されたそうです。しかし、50台収容という要望に対して素直に設計をしようとするなら、7割程しか収まらない敷地面積だったそうです。困難な条件の中で廣田さんが捻り出したのは、車庫内部の柱をできる限り無くすためのアーチ梁でした。このアーチ梁を5つ並べることで巾40m 奥行18メートルもの大空間を得ることができ、要望に応えることができたのでした。

1階車庫北方建築VOL.1 No.2より

 限られた予算だったので、鉄骨ではなく鉄筋コンクリートでのアーチとなり、運転員共同住宅は1戸あたり台所付きの和室2間、僅か11坪だったそうです。これに対してベランダは大きく、車庫屋上は子供たちの遊び場として開放されていたとのことです。

北方建築VOL.1 No.2より

 断面図を見ると、この建物のトリッキー具合がよくわかります。このアーチ梁は道路からは共同住宅裏に隠れていましたので細い裏通りに入らないと見ることができなかったようです。そんなこともこの建物がちょっとした伝説になっているのかも知れません。それにしても、コルビジェのソビエトパレスのことが思い浮かんでやみません。
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