建築年表 公共編

kochizu/1960

興国印刷

kochizu/1960年

札幌市西区西町南13丁目

現存せず

北海道立寒地建築研究所

不明

90年の歩み 興国印刷小史より

 現在のスーパーオートバックスSAPPOROのところにあった興国印刷。西区の旧国道5号線沿いには印刷工場がたくさんあって、この興国印刷の向かい側には三陽印刷、少し離れて今も現役稼働する岩橋印刷、山藤印刷(現 山藤三陽印刷)など、大きな工場が繰り返し現れる国道沿いの景色は私の原風景となっています。

 さて、この工場は北海道立寒地建築研究所の設計だったそうです。鉄骨コンクリートブロック造という構造は、鉄骨で大空間をつくりつつコンクリートブロックで耐火と高気密を実現するものだったと思います。本州の中小工場には今でも波型鉄板の1枚壁という建物を多く見ることができますので、これは当時とすれば立派な建物だったでしょう。冬の工場内は印刷機械の発する熱で暖かかったのではないかと思います。夏は暑かったかも知れませんが、捻じり鉢巻きで辛抱する作業員さんたちの姿が思い浮かんできます。もしくは逆に環境改善を求めて経営者側と交渉する場面もあったかもしれません。興国印刷は最後には他社に吸収されてしまったそうですが、社史には健全そうな労使関係の物語も書いてあって、そのような会社で働ける幸せがにじみ出てきていました。

 そういえば、国鉄バス乗車中の停留所案内で「次は手稲東中央、興国印刷前です。」というアナウンスがあったと記憶に残っています。こんなことも興国印刷の建物が特別に思い出されるのかもしれません。
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