現在のマルサ...ではなく、ルトロワの南半分側にあった札幌テレビ放送会館。鉄筋コンクリート造５階建てで、１階にテレビスタジオと３階に２つのラジオスタジオがあったそうです。

　設計は山下寿郎設計事務所札幌支店の印藤文雄さんです。当時の札幌で厳重な工事監理者は、山下設計の印藤さんと三菱地所の星野さんのお二人というのが業界で有名だったそうです。大小スタジオのあるビル内部は様々な天井高の空間が複雑に絡み合い、さすがの印藤さんも設計作業に神経を擦り減らす毎日だったそうです。

　印藤さんはこのビルのファサードをアルミとコンクリート打ちっぱなしの対比で表現されました。この時期より札幌はカーテンウォールの外壁が盛んに採用されますが、こだわり派の印藤さんはやはり定石を外したデザインをされました。アルミサッシの窓下パネルにホーロー引きの黒鉄板を用い、複層のブルーペンガラスをはめてアルミの美しさを際立てたのだそうです。道路からこのビルを眺めれば、コンクリートのライトグレー、アルミのシルバー、ホーローパネルのブラック、ガラスのブルーと、かなりスタイリッシュなカラーリングの外観だったと思われます。カラー写真を見てみたいです。