建築年表 公共編

kochizu/1966

クレードル興農 札幌会館

kochizu/1966年

札幌市中央区南4条西13丁目

二葉設計

東急建設
 クレードル興農の会社案内によりますと、この会社は昭和7年に喜茂別町でアスパラガスの缶詰生産を始められたそうです。アスパラガス揺籃の地にちなみ「ゆりかご」を意味する「クレードル」という言葉を社名につけたとのことでした。その社名ロゴや商品広告が看板屋の手によってシャッターに描かれていますが、今ではこのような風景もほとんど見られないものとなりました。コの字型に飛び出た窓枠も時代を象徴するデザインですし、剥がれ落ちる外壁タイルへの対処にネットをかけた姿というものも珍しいわけではなく、雪国の気候が建物に悪さを及ぼした例として見ることができましょう。

 さて、現在のように物流の充実した世界に暮らしていますと、昭和の食生活がとても昔のことのように感じられます。毎晩のおかずに糠ニシンや塩鮭、両親手作りの漬物に塩辛なんかを食べていたのは、実家に保存食文化が色濃く残っていたからなのかも知れません。また、この会社のロゴの入ったアスパラやコーンの缶詰もステンレス流し台の下にいくつも置かれていて、台所周りの見慣れた景色であったと思い出します。新鮮な食品をあたりまえのように食べられる平和に感謝しつつ、再び塩漬け食品を食べなければならない事態にも覚悟しておこうと思う今日この頃であります。まあ、好物なのでむしろ良いのですが。
 こんなことを思いながら、クレードル興農の社屋を眺めたのでした。
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