息子たちと 2013.3.29
しかし、それでも尚、「残すべき建築」というものがあるというのです。「残っていてほしい」とか「残したい」とは、ニュアンスが違います。断定の言い方に、積極的な深い理由がありそうです。そしてそのまま裏を返せば「素敵であっても解体して全く構わない建築」があるとも受け取れます。
「残すべき建築」とは一体どんな定義で、そして札幌にあてはまる建物があるのならどの建物になるというのでしょうか。これがはっきりすれば、古建築たちとすっきりお別れできます。確かに「懐かしいから壊したくない」という気持ちだけでは説得力がありませんし、古けりゃ何でも残すのかと問われれば、確かにそうではありません。
こんな悶々とした気持ちに整理が付くのではないかと、松隈洋さんの「残すべき建築」という一冊を手に取りました。しかし、残念ながらその中にも納得できる回答を見つけられませんでした。
恐らく「残すべき建築」なんて無いに違いありません。
残す事を目的にした途端、その建物が色褪せていくのを見るのは辛いのです。
生々しく使われていることに色気が宿るのであって、それを大事にする住み手を想像するのが楽しいのです。
もしも、ほんの少し希望のもてる答えがあるなら、ただひたすら記録して時代の象徴を切り取り、記憶を残し続ける事にあると思っています。 2013.5.14