札幌の鉄筋コンクリート造住宅は、この時期から徐々に見られるようになったと思います。
この住宅は、のちに大手設計事務所の社長をされたOさん自らの設計と伝えられています。
ゆるい傾斜地の敷地は裏側にあたる西側が高いので基礎高にして住宅を持ち上げ、東側前面道路より地階の車庫に入られるように工夫してあります。基礎高にも関わらず、深い軒と横貼りの羽目板が地面に這うような平べったさと木造のような味を演出して威圧感は感じられませんでした。それもそのはず、Oさんは当時としては挑戦的なフラットルーフを実行しながら居室の天井高を抑え込んでいます。恐らくその高さは2mくらいないのではないかと思われます。Oさんは薄ぺらく見えることをかなり意識していたと言えそうです。長い南面の方は5部屋にも渡って大きな窓ガラスが連続して開放感のある姿でしたが、深い軒が夏の強い日射を遮り、冬場の低い日射は取り入れて室内はポカポカしていたのではないでしょうか。
築60年とは感じさせないほど美しい外観に、前を通るたびに見惚れたものでした。恐らく、この深い軒が外壁を守ってくれたのでしょう。もちろんそれだけでなく、お住まいの方の丁寧な手入れが感じられる佇まいでした。