失われた建築

lost/2017

札幌大同生命ビル

2017年
解体

2017.04.01

札幌市中央区北3条西3丁目

1975年

黒川紀章建築・都市設計事務所

地崎工業
 札幌大同生命ビルは、空中庭園のある3階が大きな特徴でした。このフロアには大同生命ギャラリーとティーラウンジだけがあるばかりで、窓の外に植えられた樹々を通してビル街を望むという仕掛けがされていたのです。設計は黒川事務所の清水正俊さんで、札幌冬季オリンピックで建設された北海道青少年会館の設計が終わった後も引き続き、札幌案件を担当されたようでした。

螺旋階段の出口

 このビルの2つ目の特徴は、交差点に面したところに螺旋階段の筒が据え置かれていたところです。階段を下りていくと地下の食堂街へたどり着きますが、くるくると上っていくと3階の空中庭園へ到達しました。ただの箱のビルというのではなく、このようなゆとりのデザインがされているところが黒川さんらしい発信といえるかもしれません。

螺旋階段と空中庭園のプロムナード

 バブル時代の頃、朝のテレビニュースに皇居のお堀に暮らすカルガモ親子のことが報道されていたことを思い出します。しかも連日のトップニュースとしてです。政治経済問題や国際問題を差し置いてカルガモ親子のことを一番に報道していた時代、道内の民放はそれにあやかってか北海道庁赤れんが庁舎にある池に暮らしていたカモを追いかけていました。そのカモたちがこの大同生命ビルの空中庭園も立ち寄るポイントにしている、そのようなことを事件さながらにレポートしていました。大同生命ビルを見ると、時代は変わるものだとしみじみ感じ入ってしまうのでした。
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