失われた建築

lost/2018

三谷牧場のサイロと牛舎

2018年
解体

2018.10.15

札幌市西区発寒8条13丁目1

2018年 解体

1928年
 札幌建築鑑賞会の中村祐子さんからメールが届きました。添付画像を開けば、三谷牧場のサイロと牛舎が解体されている様子の写真でした。

 私は三谷牧場の隣にある札幌市立西小学校に通っていましたが、その頃にはもう既に広大な原っぱになった元牧場だったような気がします。学校の周りには、この三谷牧場をはじめ、発寒木工団地の工場群、函館本線を越えれば豊平製鋼を代表する発寒鉄工団地の工場群があって、写生会のネタには事欠きませんでした。

 サイロや牛舎は、緑を背景として赤レンガと白い目地と窓枠を浮き立たせて描けば、まず失敗はしません。しかし、モクモク煙をはく煙突や外壁に排気ダクトのある鉄工場、ブンブンと大きな機械音を出しているブロック造やモルタル塗りの木工場を描くのは難しかったです。だいたいにして、すす汚れた雰囲気やくたびれた建物の様子をさわやかな青空の下で描くというのは無理なのですよ、先生。

 しかし、早熟な生徒というのはやはりいるものでして、どんより曇った空に傷んだ外壁の工場からうつむいて出てくる作業員や憂鬱そうにタバコを燻らす作業員の姿などを描くのです。それに感化され、今まで描いた画用紙を破り捨て、新たに早熟バージョンを描いてみるのですが、どうしてもダルい感じになりません。不完全燃焼状態で写生会の時間は終わり、私は欲求不満分子になっていました。

 しばらくしたある日、朝の会で先生が、早熟君の絵を小学生絵画コンクールに出してみたら最優秀賞をとったと、うれしそうに報告をしました。思わず私は立ち上がって、先生の行動に異議を申し立てました。彼の作品だけを応募した先生への抗議でしたが、元々、先生のことが気に食わない数人が援護射撃をしてくれたのでした。早熟君は申し訳なさそうに小さくなっていました。

 という具合に、またどうでも良いことを思い出しながら添付画像を見ていましたら、?マークが点灯しました。レンガ造と思っていた牛舎ですが、鉄骨造でブロック壁にレンガを貼っているように見えるではないですか。確かこの牛舎はレストランに改修されて使われていたので、これはその時の改修跡なのかもしれません。

 さっぽろ・ふるさと文化百選の建物に選ばれていたサイロと牛舎。そのプレートによると建築年は1928年とあります。まあ、鉄骨造なんてことはないですね。
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