失われた建築

lost/2019

SHALFEIEFF シャルフェーフ商会

2019年
解体

2019.07.20

札幌市中央区北3条西17丁目2

2019年 解体

1968年

田上建築制作事務所

在りし日のシャルフェーフ商会 2011年

内部及び外装の解体中 2019年

囲って本格的な解体工事準備 2019年

 田上教信者の中でも、マニア度の高かったシャルフェーフ商会。保税倉庫と事務所、そして経営者の住宅を兼ねた建物でした。ロシア人のシャルフェーフさんが、農業用機械の輸出入の商売をされていたそうです。1967年にソビエト領事館が札幌にできたことと、この建物の建設に何らかの関係がありそうです。でも、どのようないきさつで田上先生が設計を受けられたのか、詳しいことはわかりません。

 保税倉庫の役割があるので鉄筋コンクリート造だったと思われますが、この外観デザインはシャルフェーフさんのリクエストだったのでしょうか?シベリヤのオムスク生まれのシャルフェーフさん、陸屋根と大きなバルコニーのデザインが懐かしき故郷を彷彿させた・・・という訳では無かったようです。敷地に必要な部屋数を組み合わせた結果、このようなボリュームになってしまい、頭を抱えることになった田上先生。師ライト先生のトーマス・ゲイル夫人邸のデザインを拝借して解決した、と思われるのです。

1909年 トーマスゲイル夫人邸 

 シャルフェーフ商会の解体工事が少し進んだある日、外部に見えがかる木部が全て撤去され、コンクリートだけの姿になった瞬間がありました。バルコニーの手摺と屋根の破風が無くなっただけで、こんなにもすっきりとシャープに見えるものなのでしょうか。ライト師匠を離れ、兄レーモンドの雰囲気になったではありませんか。田上先生、ひょっとして設計段階ではこのように見えることを期待していたのではないかと思わせてくれる出来事でした。

この時のRC造すっぴんの顔とボリューム感がカッコいい

 ところで、2階バルコニー内側の窓は全て腰窓だったので、バルコニーへはヨイッショっと窓を跨がないと出られなかったのです。
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