1972年の竣工後、増築を繰り返して大きくなった宮の沢ハイツ。
2017年3月には、屋上の庇が30mにわたって崩落してニュースに取り上げられました。
このほど、遂に解体されることになったようです。
深夜に見てみますと、ひと気のない真っ暗なマンションにバルコニーのデザインが浮かび上がりました。この時代のマンションによく見る一連の装飾です。私にはアイヌ文様をモチーフにしているように感じられるのですが、どうなのでしょうか?もう少し踏み込んだデザインにすればいいのになあと思うのです。
札幌におけるマンションブームの黎明期は、ポストモダニズムの誕生頃と重なっています。そんな時代背景もあってか、古いマンションにシンプルなデザインのものを見ることはできません。何か飾りを付けなければならぬという強迫的な圧力と、シンプルは貧しい、いや、貧しく思われるかもしれないという他人の目の恐怖が背景にあるような気がします。無印良品が世に登場した1980年、待ってましたと言わんばかりに起こった拍手は、それまでにはびこった安易な装飾に対する反旗だったようにも思われます。
宮の沢ハイツの最期を見て、そんなことを考えたのでした。