失われた建築

lost/2022

山の手の平屋貸家群

2022年
解体

2022.08.22

札幌市西区山の手3条8丁目

鉢植えで飾られた華やかな玄関周りGoogle streetview2010 より

 西区の山の手には、懐かしき昭和の平屋の貸家がいくつかの群れになって残っています。そのうちのリーダー格的な群れが山の手3条8丁目にありました。何故リーダーかと言いますと、無落雪屋根の住宅が含まれていたからなのです。

 屋根の上に雪を乗せたままにしておくという発想は1970年頃からじわじわと生まれ始め、1980年代にはかなりメジャーになりました。そのような新しい発想の屋根が、この貸家に採用されていることが不思議でした。私は、この貸家群を1960年代の建築だろうと踏んでいたからなのです。
 無落雪屋根は群れの中でも数軒だけにしか採用されていなく、残りは三角屋根でした。しかし、どの貸家も玄関の位置や窓の配置が同じだったので、無落雪屋根の貸家も元々は三角屋根だったのではないかと思います。恐らく、屋根から歩道へ雪が落ち溜まることに対処して、該当貸家の屋根を改造したのが理由ではないでしょうか。最初から無落雪屋根だったとしたら、戦後北海道の住宅建築史の中で「早すぎる事件」に値すると思います。三角屋根の取りついていた跡がモルタル壁面にうっすらと残っているのも見えましたので、やはり、後からの改造だろうと思われます。

 ああでもないこうでもないと悩ませてくれた貸家群でしたが、このたび解体されてしまいました。
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