失われた建築

lost/2022

岩見沢市役所

2022年
解体

2022.10.09

岩見沢市鳩が丘1丁目

1965年
 道内の各市役所には、私好みの昭和建築がまだいくつか残っています。1933(S8)年の小樽市役所を筆頭に、1952(S27)年の室蘭市役所、1956(S31)年の三笠市役所などの印象的な建物、そして1960年代のものも登別市役所、岩見沢市役所、江別市役所、歌志内市役所、芦別市役所などが残っています。特に建替え検討中の江別市役所は北海道百年記念塔を設計された井口健さんが久米建築事務所のスタッフだった時の設計で、百年記念塔の香りがほのかに感じられるポイントがあり、モダニズム建築好きの方にはぜひ見に行ってもらいたい建物です。

 さて、1965(S40)年の岩見沢市役所がこのたび建替えられ、解体されました。ホールは吹抜けでアールの階段やコルビジェ風のサッシ割りが見られたりと、設計者のデザインの好みが感じられました。その中でも1番の見所は、エントランスの庇でした。
 ギュインとせり上がったデザインは、元を辿ればコルビジェによるインドチャンディーガルの議事堂(1955-1962年)の庇に行きつきそうです。しかし、そのワイルドな庇を上品に読み替えた坂倉準三さんの1964(S39)年枚岡市庁舎の庇からの影響も感じます。坂倉さんのように庇へ繊細なデザインを施すことが出来なかったのは、積雪による痛みが懸念されたからなのでしょうが、庇を支える足をザラザラの仕上げとすることだけは実現出来たようでした。全体の印象も立体感にあふれ、一般的な庁舎建築に比べて高い存在感があります。設計者は細部をもっと作り込みたかったでしょうが、これ以上のことをすれば予算的な問題が発生したり、デザインの面においても上司からの承認が得られないだけでなく、全てがご破算になるかもしれないといった計算があったのかもしれません。
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