失われた建築

lost/2022

代々木ゼミナール学生寮

2022年
解体

2022.10.20

札幌市東区北8条東2丁目

1980年頃年

大成建設
 この建物は、直近まで北海道大学の外国人留学生向けの寮として使われていましたが、元々は代々木ゼミナール札幌校の学生寮として建てられたものでした。つまり、大学への浪人期間、代々木ゼミナールで受験勉強をするための拠点とするワンルーム住居だったのです。

 そのような建物が転用された挙句、最終的には取り壊されるという状況を目の当たりにして、時代だなあとしみじみ感じ入りました。私の学生時代、志望大学へ入学するために浪人することは珍しいことではありませんでした。現在はそのような競争がなくなったのか、現役合格できるように進路を見定めるようになったのか、浪人への教育費を払いにくい世の中になったのか、私にはそんな風に思われます。

 さて、この建物の外観を見ますと、各室が雁行した配置になっていることがわかります。そうすることによって窓際の机に2方向から光の入る申し分のない環境となっています。外壁面積が増えることによる建設費用のアップ、暖房効率のダウンなどは、バブル崩壊後に社会人経験をしてきた私から見れば、贅沢で無駄の塊と見えてしまいます。しかし、それを可能とした右肩上がりの時代を表した建物と言えるかもしれません。
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