失われた建築

lost/2023

札幌ターミナルビル・札幌そごう(現 札幌エスタ)

2023年
解体

2023.08.31

札幌市中央区北4条西2丁目1

1978年
 「札幌エスタの閉店」は、私にとっては「札幌そごうの記憶の消滅」を意味します。

 1978(S53)年の札幌そごう開業当時、私は小学1年生でした。新しいデパートの登場とは、丸井や三越とは別におもちゃ売り場がもう1ヵ所増えるという大事件だったのです。テレビから「SOGO」のコマーシャルが流れると、最新かつたくさんのおもちゃに溺れる自分を思い浮かべたものでした。

 ♪ エスオージーオー そごうへ行こう エスオージーオー そごうへ行こう 両手にいっぱいお買い物 揃って そごうへ行こう ♪

 このようなキャッチソングと共に映し出された映像は、3階4階の吹き抜け越しに大勢の客がエスカレーターで上階へ運ばれる様子でした。そしてその背景には床から天井まで到達する巨大なピカピカの森がありました。この様子は、おもちゃ売り場への入口にふさわしいお伽話的な風景として強烈な動機づけとなったのです。

「北海道の幻想」伊藤隆道 作さっぽろ文庫21 札幌の彫刻 より

 ピカピカの森はガラス張りの天井や腰壁に反射して、その妖しさを倍増させていました。ところがいつの頃か撤去されてしまい、気がついた時には金を稼ぐ売り場に組み込まれていたのです。デパートの中にアートがあった時代、そのアートが失われてしまった時代、これらを並べてみることでも歴史の一面を示すことができるようです。

閉店直前の札幌エスタ3・4Fの吹抜け 腰壁のガラスが残っていました
3Fからの見上げ 4Fからの見下ろし

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