「丸井今井一条館西ビルが10月いっぱいで閉鎖、来月より解体」という新聞記事がでました。この建物は元の丸一斉藤ビルのことで、丸井に譲渡されたあともそのまま活用されていました。丸井さんもこのビルのことを貴重で美しいと理解されていると聞いたことがありますが、遂に取壊の判断をしたようなのです。昭和20年代の建築がまたひとつ消えてしまいます。
このビルの建設当時は、本州企業の札幌支店ビルか官庁建築がポツリポツリと建つ程度だったそうです。そんな戦後の物資不足の時代に、札幌の会社が鉄筋コンクリートのビルを建てたのです。きっと、札幌市民に復興の自信を与えてくれたに違いありません。しかもこのビルは、オーチスのエレベーターがついた贅沢建築だったのでした。
以前、そのエレベーターが今でも動いているのかどうか確認しに行ったことがあります。恐る恐る呼出ボタンを押すと、「チーン!」という大きな音が上階から聞こえてきました。見上げてみれば、階数表示板の針がぶきっちょに左へ動きだすではありませんか。その針の動きに合わせて、箱がゴトンゴトンと揺れながらゆっくりと下りてきました。その箱と共に現れたエレベーターのオールドガールが白手袋で蛇腹式の扉を開きながら、「何階でいらっしゃいますか?」と聞いてきました。自動運転と思い込んでいた私は、呼出ボタンなど押していませんというような顔をしてごまかしました。