懐かしい風景

nostalgic/2011

27年振りの再会

2011.08.24

札幌市
 手稲富丘にはラブホテルが多い。
 その代表格が「ホテル太陽」とそれに連なる「ていね山荘」「ホテルオリンピア」であります。1984年、近くの中学に上がったばかりの私は、その妖しきネオンサインの奥での秘め事に想像を膨らませたものでした

 今日、このホテルの前に閉館の立て看板が設置されているのを見つけました。驚いて、最後の姿を記録すべくカメラを構えていると、「そこで何をしている!」という大声と共に、こちらへ走り来る足音が聞こえてきたのです。ホテルのご主人と思しき初老の男性が、怖い顔をして私の方へ近づいてくるではありませんか。私は突然懐かしい記憶を思い出し、姿勢を正して男性を迎え待ちました。


 折しもその年に始まったテレビドラマ「毎度おさわがせします」に影響を受け、私と悪友はホテルの窓を覗いてみようという計画を立てました。そして真夏のある放課後、ホテルの裏山からの侵入を決行しました。しかし、藪を掻き分け、やっとの思いで敷地へ到着した所で事件が発生しました。「そこで何をしている!」という大声と共に、こちらへ走り来る足音が聞こえてきたのです。我々は、もたつく足を引きずりながら無我夢中で山へ引き返しました。恐らく、あれを腰が抜けた状態というのでありましょう。初動段階で失敗した計画は、結局その後も実行に移されることはありませんでした。
 ご主人が近づいてくる間、私は直立したまま微笑みさえ浮かべていたかも知れません。初めは怪訝な顔をされていたご主人でしたが、事情を話して撮影の許可を得ました。そしてその後しばらくの間、付近の昔話に花を咲かせたのは言うまでもありません。
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