懐かしい風景

nostalgic/2011

トタン屋根の色について

2011.12.04

 札幌にはトタン屋根の住宅が多い。

 私が社会に出た1990年代、塗料メーカーに勤めた友人がこんな事を言っていたことを思い出します。

 「東京の大学出身者は赤、北海道の大学出身者は青が担当の色になるんだ。」

 色別に営業担当がいるというのは、部外者にはなんとも理由の分からない話です。青担当の友人が恨み言を呟いている様子から、赤を担当する一流大学出身者は左団扇で好成績を確保できるのだろうということが想像できました。私は、赤と青の需要がそんなに多いのだろうかと考えて、ふと、札幌のトタン屋根のことが頭に浮かんできました。

昭和51年 札幌市北区麻生町 「国土画像情報(カラー空中写真) 国土交通省」 より

 昔の札幌の空撮写真を見ますと、町が赤と青の屋根で覆いつくされているのが分かります。トタン屋根は明治時代からあるそうですが、昭和30年以降より標準的に採用されて、更にペンキ仕上げとなったそうです。この町、赤6割、青4割くらいの比率だろうか。青い屋根も、なかなか健闘しているようです。

 札幌の住宅設計の歴史を読むと、本州式の設計や因習から簡単に逃れたということを頻繁に目にします。それなのに、屋根のペンキ色については、赤か青かの二者択一の時代を長く引きずったのではないでしょうか。

 私の父は、昭和52年に自宅を建てた際、トタン屋根を特別に茶に塗らせました。コダワリ派を自称する父が当時小学1年生の私を相手に、赤や青の屋根の安っぽさについて熱く語っていたことを思い出します。
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